Cross Over
腕時計を見る。
6時10分前ーーー。
デスクに資料をまとめ、トンと置いた。
ーーーー知らないことないよね?付き合ってるんなら。
倉沢さんの言葉が頭をよぎる。
新崎先輩の何を、
倉沢さんが知ってるっていうの・・・・?
うまく言葉にできない何か大きな不安、もやもやした黒い影のようなものが、
心を塞いでいく。
あたしは、まだ、
新崎先輩の本当の部分を知らない・・・
視線を下に落とす。
ーーーー大変だよね。新崎さんを支えるのは。
倉沢さんの言葉が脳裏をよぎったあと、
決意した表情でデスクを立った。
先輩を支えたい。
ずっと一緒にいたい。
あたしが、
強くならなきゃ。
先輩のために。
強い想いを胸に刻んで、
不安に押し潰されそうな心を押し殺して、
オフィスをあとにした。