Cross Over
接触
__あの夜。

そう、あの夜に澪の言葉を聞いてから、もう数日経つが。
あれ以来ずっと、桐生先輩のことが頭の中を駆け巡っていた。



仕事から帰り、ため息をつきながら自分の部屋に入る。



そっと、ベッドの脇に置いてある、煙草とジッポに触れる。



これがもしかしたら


桐生先輩のものなのかもしれない…




そう思った途端、自分の早とちりな考えを拒絶しようとする。




同じ名前というだけで、桐生先輩であるとは限らない。


ただの偶然かもしれない。






しかし。



頭のどこかで、何かが問いかける。



もし…






いや、

…そんなことあるわけない。




あんなにかっこいい人があたしの彼氏?



そんなことあるはずがない。



しかし、何故か胸がざわつく。






どうにか確かめる方法はないのか。




いや。そんな方法はない。




本人に、私の彼氏ですか?と聞くわけにもいかない。





はぁ…。





ため息をつきながら、ベッドに座り込む。




とりあえず。



この間のエレベーターでの彼が、母のいう『怜』という人物だとは、確信できない。


でも、
エレベーターの彼が、企画部の『桐生 怜』という人物であることはわかった。



少し頭痛がする。





ぐるぐると同じことばかり考えているものの。

ここ数日、頭痛が次第に酷くなっている気がする。



ため息をつき、ベッドに倒れると。

考えるのをやめて、色々なことをかき消すように今は、布団の中へと潜り込んだ。








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