Cross Over

海岸沿いの階段に並んで腰掛ける。




少し寒そうに、でもそれを隠すように振る舞っている姿に、


自分のスーツのジャケットをかける。




『先輩っ・・・大丈夫ですあたしっ』



かけられたジャケットを見て、顔をあげる。






『いいから。羽織ってろ。』






一言言うと、はい、と静かに、照れたようにうつむいた。




これからどうする・・・。



あんなことしてしまい、自分はこれからどうするつもりなのか。


だが、



これで付き合わないというのも、おかしい。


ただの、軽い男になってしまう。



・・・佐山じゃねえんだから。




はあ、と小さくため息をつく。





『先輩っ。』





ふいに声をかけられ、隣りを見る。






『先輩は、彼女いるん・・・ですよね?』






恐る恐るこちらを見ながら問いかけてくる。






しばらく考えたが、ふっと笑って答える。





『なんで、いると思うんだよ。』




『だってっ・・・・』




急にうつむき口ごもる。






『先輩。モテるから・・・っ。きっとたくさん彼女いるんだろうと思って・・・っ。』






その言葉に思わず声をあげて笑う。





『たくさんってなんだよ。』




佐山かっ。




心の中でつっこみながら、笑って隣りを見る。





『いねえよ。いたら、こんなことしない。』





そう言いながら、そっと肩を抱き寄せる。





あー・・・もうだめだ。止めらんね。





抱き寄せられて固まっている、その顔を上に向けさせ、またそっとキスをする。



ーーーー。





さっきより、少し長く唇を重ねた。



息を止めているように緊張しているのが、小さな体から伝わってくる。





唇を離したあとゆっくり抱き締めて、頭を軽くポンポンと撫でたあと、つぶやいた。





『もう行こうか。』





腕の中の小さな顔は、照れたような表情で、でも、幸せそうにこちらを見上げて、はい、と答えた。


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