Cross Over
想い
あの日からもう2週間近く経つ。
新崎先輩にメールをしても、返信が来ることはない。
あたし・・・嫌われちゃったのかな・・・
何か悪いことを聞いてしまったのだろうか。
家族についてのことを聞いた瞬間の、先輩の一気にはりつめた表情を思い出す。
鳴らないケータイを開き、ため息をついた。
あたしが悪いんだ。
先輩のこと、なにも知らない。
そんなあたしが軽々しく、先輩の触れられたくないことに土足で踏み入ろうとしてしまった。
それがきっと悪いんだ。
先輩に嫌な想いをさせた。
もう嫌われているのかもしれない。
連絡をしても返ってこず、
いくら違うオフィスでも、まったくすれ違うことすらないのは、もしかしたら、先輩が自分を避けているからではないか。
でも。
最後に会ったあの夜。
海でのことを思い出す。
あたしは、
あたしはそれでも先輩のことが好きだ。
付き合おうと言われたわけではない。
だが、
あの海での抱き締めてくれた先輩の腕、優しくて、でも力強い。
先輩の体温を思い出す。
先輩に謝ろう。
そして、
自分の気持ちを伝えよう。
先輩との関係をこれで終わりにしたくない。
はっきりした自分の気持ち。
この気持ちだけ、しっかり伝えよう。
デスクのカレンダーを見る。
ピンクのペンで囲んだ6月26日。
あと、一週間。
腕時計を見ると定時を過ぎていた。
一人、決心をしデスクを立った。