Cross Over
入院してから10日ほど経った頃、
会社の同僚がお見舞いに来てくれた。
『なごみー!』
見覚えのある顔が、病室の扉を開けた途端こちらに駆けてくる。
『もおー!心配したんだからーー…!あんたはどんだけあたしに心配かければ気が済むのよーー!?』
涙目の彼女は顔を真っ赤にして、手を握ってブンブン振りながら、文句を言い続けている。
『ごめんごめん澪。もう大丈夫だから。心配させてごめんね?』
懐かしい澪の言葉や空気に、ふっと笑みが零れる。
高本 澪(たかもと みお)。会社の同期で親友。
背が高くてモデルのようなスラっとした体型、ベリーショートの髪が似合う。いつもにこにこして元気はつらつな澪に、入社してからいつも助けられてきた。
さっぱりした性格の澪と、ドジで少しおっとりとした性格の自分が、同期という枠にととまらずプライベートでも意気投合し、親友になるのに時間はかからなかった。
記憶のことで元気がなかったが、澪の姿、言葉に、今までの不安ももやもやした思いも吹き飛ぶような気がした。
『あんたが好きなリンゴとー、あとキウイとー。あ、グレープフルーツは、あたしも食べてもいい?』
袋の中から次々とフルーツを出している澪に顔を綻ばせながら、ふと扉の近くに立っているもう一人の影に気付く。
『…沙織ちゃん?』
声をかけられた彼女は、はっとした表情でこちらを見る。
『沙織ちゃん、来てくれたの!?』
思わず顔が綻び、扉の前でそわそわしている彼女に声をかける。
『沙織ー!なにしてんのあんたは!早く入りなさい!』
グレープフルーツをかじりながら澪が手招きする。
こちらにペコリと会釈をし、彼女がこちらに近付いてきた。
『沙織ちゃんも来てくれたんだね。ありがとう。』
嬉しさを抑えきれずに思いっきり笑顔を向けた時、ふと沙織の表情が曇る。
顔色を伺うような視線を向けて、ゆっくり話し出す。
『先輩…。大丈夫ですか?』
『…?うん!もう大丈夫!体はまだ少し痛いところもあるけど、全然元気!澪と沙織ちゃんが来てくれたら余計元気になったよ!』
『……。』
『……?』
『…そうですか。…よかった。』
一瞬不思議そうな顔でこちらを伺い、そのあと、ふっと微笑んだその顔を見て、やっと安心して微笑んだ。
高城 沙織(たかじょう さおり)。彼女は会社の一つ下の後輩。
美人で品があって、女から見ても惚れ惚れするような長い黒髪のストレートをサラリとさせている。
礼儀正しくて、いつも何かと慕ってきてくれる沙織を普段から可愛がっていて、そんな沙織が大好きだった。
『びっくりしてんのよ沙織は。あんたが点滴つけて死にそうになってるんじゃないかと思ってたから。そうでしょ?』
ケラケラと、笑いながら澪が沙織に言う。
『そうなの!?ごめんね沙織ちゃんにも心配かけて。』
『い、…いえ。』
少し動揺したような表情で沙織がうつむく。
『大丈夫よ。なごみはぼーっとしてるように見えて、結構図太いし、ちゃっかりしてるんだからー。』
『…それ。なんか、ひどくない?』
澪とケラケラと笑い合いながら、沙織ちゃんを見ると、少し怪訝そうな表情で静かに微笑みながらこちらを見ていた。
会社の同僚がお見舞いに来てくれた。
『なごみー!』
見覚えのある顔が、病室の扉を開けた途端こちらに駆けてくる。
『もおー!心配したんだからーー…!あんたはどんだけあたしに心配かければ気が済むのよーー!?』
涙目の彼女は顔を真っ赤にして、手を握ってブンブン振りながら、文句を言い続けている。
『ごめんごめん澪。もう大丈夫だから。心配させてごめんね?』
懐かしい澪の言葉や空気に、ふっと笑みが零れる。
高本 澪(たかもと みお)。会社の同期で親友。
背が高くてモデルのようなスラっとした体型、ベリーショートの髪が似合う。いつもにこにこして元気はつらつな澪に、入社してからいつも助けられてきた。
さっぱりした性格の澪と、ドジで少しおっとりとした性格の自分が、同期という枠にととまらずプライベートでも意気投合し、親友になるのに時間はかからなかった。
記憶のことで元気がなかったが、澪の姿、言葉に、今までの不安ももやもやした思いも吹き飛ぶような気がした。
『あんたが好きなリンゴとー、あとキウイとー。あ、グレープフルーツは、あたしも食べてもいい?』
袋の中から次々とフルーツを出している澪に顔を綻ばせながら、ふと扉の近くに立っているもう一人の影に気付く。
『…沙織ちゃん?』
声をかけられた彼女は、はっとした表情でこちらを見る。
『沙織ちゃん、来てくれたの!?』
思わず顔が綻び、扉の前でそわそわしている彼女に声をかける。
『沙織ー!なにしてんのあんたは!早く入りなさい!』
グレープフルーツをかじりながら澪が手招きする。
こちらにペコリと会釈をし、彼女がこちらに近付いてきた。
『沙織ちゃんも来てくれたんだね。ありがとう。』
嬉しさを抑えきれずに思いっきり笑顔を向けた時、ふと沙織の表情が曇る。
顔色を伺うような視線を向けて、ゆっくり話し出す。
『先輩…。大丈夫ですか?』
『…?うん!もう大丈夫!体はまだ少し痛いところもあるけど、全然元気!澪と沙織ちゃんが来てくれたら余計元気になったよ!』
『……。』
『……?』
『…そうですか。…よかった。』
一瞬不思議そうな顔でこちらを伺い、そのあと、ふっと微笑んだその顔を見て、やっと安心して微笑んだ。
高城 沙織(たかじょう さおり)。彼女は会社の一つ下の後輩。
美人で品があって、女から見ても惚れ惚れするような長い黒髪のストレートをサラリとさせている。
礼儀正しくて、いつも何かと慕ってきてくれる沙織を普段から可愛がっていて、そんな沙織が大好きだった。
『びっくりしてんのよ沙織は。あんたが点滴つけて死にそうになってるんじゃないかと思ってたから。そうでしょ?』
ケラケラと、笑いながら澪が沙織に言う。
『そうなの!?ごめんね沙織ちゃんにも心配かけて。』
『い、…いえ。』
少し動揺したような表情で沙織がうつむく。
『大丈夫よ。なごみはぼーっとしてるように見えて、結構図太いし、ちゃっかりしてるんだからー。』
『…それ。なんか、ひどくない?』
澪とケラケラと笑い合いながら、沙織ちゃんを見ると、少し怪訝そうな表情で静かに微笑みながらこちらを見ていた。