Cross Over
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『俊くんとお付き合いできたのなら、そう報告してくれたらよかったのに。この子ったら恥ずかしがって言わなかったのねー。』
莉菜の母親の声ではっと我に返った。
『ずっと俊くんのこと聞かされてたのよ。でも、彼はモテるし、私なんてお門違いだって。でも、片想いが実るなんて、素敵ね。』
ふふふ、と嬉しそうに俺を見て笑う莉菜の母親に、微笑みを返しながら考える。
莉菜が俺のことを・・・?
いや、
まさか。そんな出来すぎた話し、信じれない。
俺は最初に会ってから半年ほど、ずっと莉菜のことを想ってきた。
その間、莉菜も俺を想ってくれていたというのか。
ふと眠っている莉菜を見つめる。
両想いだったのか。
俺と莉菜は。
花瓶の水を変えてくると病室を出ていく母親に返事をし、二人きりになった病室で、莉菜を見つめる。
莉菜の母親が自分を知っていたのは、莉菜が以前から俺の話しを母親にしていたから。
そこに、俺と一緒にいた時に起きた事故で、両親は俺と莉菜が付き合っていたんだと思ったのなら、それはなんら不思議ではない。
先ほど思い出していた莉菜とのエレベーターの中での出来事。
その時の莉菜の様子。想いを伝えたあとの莉菜の言葉。返事。
そのことを思い出すとーーーー。
莉菜も俺のことを。
そう思いながら莉菜を見つめる。
莉菜が今まで以上に、無償に愛しく思えた。
莉菜が目を覚ましたら、莉菜の前から姿を消そうと思っていた。
だが、
もし莉菜も俺を想ってくれていて、俺と同様にこれが実った恋なんだとしたら。
目を覚ました時、俺がいないことに莉菜は悲しむだろうか。
もし、そうならきっと悲しむはずだ。
そんな想いもさせたくない。
莉菜の髪をそっと撫でる。
莉菜が目を覚ましたら謝ろう。
事故の原因は俺にあると。
そして、これからも莉菜が望んでくれるのであれば、
俺と一緒にいてくれないかと。
俺に、
莉菜を守らせてくれないかと。
今回知った事実で、考えていたことが変わった。
そして、莉菜の目覚めを待とうと、決意した。