Cross Over
次の日。
仕事の書類を整理しながら、時計を見る。
針はもうすぐお昼の12時をさすところだった。
ふうと息をつき、澪に声をかけようとデスクを立とうとした瞬間。
自分を呼ぶ声が聞こえた。
『莉菜ちゃんっ。』
声がしたほうに目をやると、
入り口から、にこにこした男性が手を振っていた。
『佐山先輩っ』
驚き目を丸くしたが、
佐山先輩は、ニッと笑ってこちらにピースサインをした。
『この間は、新崎がごめんな?あんな言い方して。』
会社の近くのカフェで、佐山先輩が話す。
黙って首を横にふる。
『あたしが、勝手に持っていったので。仕方ないです。』
胸がズキンと傷んだが、それを抑えながら返した。
佐山先輩が視線をそらし、はあ、とため息をつく。
『なんで俺が莉菜ちゃんに会いに来たかと思うっしょ?』
ふっと佐山先輩が微笑んでこちらを見る。
コクリと頷く。
へへへ、と笑いながら佐山先輩はコーヒーを飲んだ。
『こんな可愛い子に新崎は好かれて、羨ましいなって思ってさ。』
新崎先輩の言葉に顔をあげる。
『あーごめんごめん。つい。莉菜ちゃんにちょっかいだそうなんて思ってないから。』
コーヒーを飲みながら、手のひらをこちらに向け佐山先輩が話す。
『新崎のこと、好き?』
不意にきたストレートな質問に、動きがとまる。
佐山先輩の顔を見る。
先輩は、ゆっくり返事を待っているような笑みを向けていた。
・・・・・
諦めないと決めたんだ。
新崎先輩がどう思ってても、あたしは・・・
佐山先輩の顔をまっすぐ見つめ、伝えた。
『好きです。先輩に冷たくされても、どう思われても。新崎先輩のことが好きだって気持ちを、変えることはできないです。諦めることなんて、簡単にはできないです。』
私の言葉を聞いた佐山先輩は、しばらくそのまま私を見つめていたが、
そのうちふっと笑う。
『そうこなくちゃ♪』
待ってましたと言わんばかりの今までで一番の笑みを向け、佐山先輩が言った。