Cross Over
それからーーー。
佐山先輩とは他愛もない話しをして、別れた。
カフェを出たあとすぐ、
あ、そうだ、と言う佐山先輩に告げられた。
『・・あいつは、結構一途なやつだからさ。すげえ不器用だし、素直じゃないけど。』
空を見上げながら佐山先輩がつぶやく。
『莉菜ちゃん、諦めずにあいつにぶつかったほうがいい。俺が言わなくても、そうするんだろうけどさ。』
こちらを見て微笑む。
『なんかあったらまたいつでも言って!じゃまた♪』
手をふりながら佐山先輩はオフィスへ戻って行った。
ーーーー。
デスクに座り、考える。
佐山先輩は、きっと、あたしのこと心配して。
それで様子を見に来てくれたんだろう。
・・・諦めずに想い続けていいのかな。
軽くため息をつきながら、
佐山先輩の言葉を思いだす。
今の状態じゃ、自分から相手にぶつからなきゃ、
何も進まない。
佐山先輩はそれを教えてくれた気がした。
先輩とまた、前みたいに笑い合いたい。
先輩と正面から向き合って、前みたいに戻る方法を探そう。
その時、
ふと顔をあげた。
そうだ。
先輩と関係が崩れ始めたのは、あたしの言葉。
『先輩って、兄弟とかいます?』
車の中での空気を思いだす。
あたしが先輩の家族について聞いた時、
あれがきっかけだった。
きっと何かある。
先輩の何かを、あたしが解かせるかはわからない。
でも、
先輩とまた前みたいに話せるなら。
先輩の何かを、解かせてあげることができたら。
それに踏み出すことは勇気がいる。
足が、すくみそうになる。
でも、
あたしに今できることをしよう。
先輩と向き合う努力をしよう、
先輩を好きなことに、その自分の気持ちに自信を持つ。
そしたらもう、何も怖くない。
しっかり前を見よう。
そう決意し、一人強い表情でうなずき、
仕事に戻った。