Cross Over
交錯
屋上の扉を開ける。
『今日はいねえか。』
いつも煙草をふかしている新崎の姿は見えないが、
ん~と背伸びをしながら手すりに近寄る。
ポケットから煙草をとりだし、火をつける。
・・・どう思われてても、諦めることなんてできない。か。
風に目を細めて、煙を吐き出した。
だいぶ凹んでいるだろうと思い様子を見に行ったが、
思っていたより自分の気持ちをしっかり持っていた莉菜に安心した自分がいる。
それに、莉菜の気持ちが変わっていないか。それを確かめに行ったのに。
ーーー諦めない。自分の気持ちを変えることなんてできない。
どっちが励まされたんだか。
その莉菜の言葉に、自分の胸が少し苦しくなった。
ふと、
屋上の扉が開く音が聞こえた。
振り返ると、黒髪の小さな影が扉から顔を出した。
『いらっしゃいませ。』
その顔を見て、ふっと微笑みながら声をかけた。