Cross Over
しばらく3人で他愛もない話しで笑い合い、会社の話しを聞いたりして、時間を過ごした。
『じゃあ、そろそろ帰るかぁー。』
ん~っと伸びをしながらバッグを持ち、立ち上がって澪が言う。
『さっ、ゆっくり寝てよくなるんだよ?』
『うん。ありがと。』
『先輩。ゆっくり休んでくださいね。』
『うん。嬉しかった今日は。ありがとうね。』
二人が来てくれたことが心から嬉しかった。
二人に会ったことで、これからのことも、どんな事実も受け入れられるような勇気が沸いた気がした。
『じゃあねー!また来るからね!』
扉からひょこっと顔を出して、手を振る澪と、ペコリとお辞儀をする沙織ちゃんに手を振って、二人が出て行った扉を見つめた。
急に静まり返った病室で一人、考える。
あの二人に記憶が一部なくなっていることは言わないでおこう。
そのうち、思い出すであろうし、これ以上二人に心配をかけたくない。
久しぶりに、人とたくさん話して、体力を使ったのか、少し眠たくなってきた。
ベッドにゆっくり横たわりながら、ふと思い出す。
沙織ちゃん。何か変だったような気がしたけど、気のせいかな。
最初、声をかけた私に驚いたような沙織の表情。そして、自分の顔を伺うような沙織の空気を思いだし、考え込む。
でも最後の辺は、いつもの沙織ちゃんみたいに笑ってたし、そんなに気にすることもないのかもしれない。
そう自分に言い聞かせ、少しだけ眠ろうと、ゆっくり目を閉じた。