Cross Over
梯子の倒れる音と、同時に鈍い痛みで目を開ける。
・・・・・・
『おい。沙織。大丈夫か?』
床に仰向けに倒れている自分の上半身を起こす。
なんとか沙織の下に入れたようで、自分の体の上に沙織が覆い被さるように乗っていた。
『俊くん・・・・ごめん・・っ大丈夫!?』
沙織がそのままの体勢で俺を見る。
『大丈夫。なんともねえよ。』
沙織の頭の上に手を置く。
『お前大丈夫か?どっか痛くねえか?』
沙織の顔を覗きこむ。
その時沙織が、頬を赤らめて少しうつむいたように感じた。
『大丈夫・・・。俊くんこそ、なんともない?』
不安そうに聞いてくる。
沙織がなんともないなら、よかった。
最初の衝撃はあったが、自分も、体にどこか痛みがあるようではなかった。
『なんともねえよ。お前みたいな軽いやつ落ちてきたくらいじゃ。』
まったく・・・気を付けろっつったろ
そう言いながら呆れたように微笑み沙織の頭を撫でる。
目を丸くしその瞳を少しうるわせながら沙織が見上げる。
床に座りながら、俺の両足の間に沙織が入っているような状態。
沙織が俺の胸によりかかるように手をあてている。沙織を抱え込んでいるような体勢だった。
沙織を抱えたまま、立ち上がろうと体を動かそうとしたその時だった。
沙織が
ふと顔を近づけてきて、
唇が重なった。
・・・ーーーーーー
一瞬、何が起きたかわからなかった。
頭がついていかず、体が動かない。
・・・・
ゆっくりと唇を離し、沙織が目を開けてこちらを見上げる。
すぐ近くに沙織の小さな顔がある。
その時、何が起きたか頭が理解した。
『・・・・・・おい』
声を出した途端、沙織が胸に抱きついた。
『あたしじゃ恋人になれないの?俊くんの。』
頭が少し混乱する。
『沙織・・・』
『あたしもう子どもじゃない。一人の大人の女だよ?』
沙織が見上げる。
沙織の言葉の意味を考える。
しばらく沈黙が続いた。
・・・マジかよ。
・・・・嘘だろ。
沙織から目をそらし、
小さくため息をつく。
『沙織。俺はお前をそんな風には見れない。俺はお前の・・・』
『従兄だから?』
沙織がいつになく真剣な表情で、まっすぐ目を見た。
沙織は、親父の弟の一人娘。
俺から見たら従妹にあたる。
小さい頃からよく一緒に遊んだ。
俺の親父は日本で一、二を争う大手電機グループメーカーの社長だ。
沙織の父親は、俺の親父の弟でありながら、親父の電機グループの弟会社の社長でもある。
仕事が忙しい俺たちの父親は、よく俺たちを一緒に遊ばせていた。
沙織を、使用人が多くいる俺の家に預けていたのだ。
中学に行き、高校に入り、
その頃からたまに親同士が顔を合わせる時しか会うこともなくなったが、
大学生の頃、高校に入ったばかりの沙織からまた連絡がくるようになった。
沙織から連絡が入れば、車で沙織を送り迎えしたり、飯に連れていったり、大学生のヒマな時間をもて余していた俺も、沙織に付き合ってよく遊んだ時期もあった。
そのうち、俺は今の会社に就職し、忙しさからあまり連絡をとらなくなっていた。
だが、大学の頃から住んでいるマンションにたまに泊まりにきたりと、忘れた頃に沙織からは連絡がきていた。その頃沙織は大学生であり、ヒマをもて余していたのだろうと思っていた。
そして去年、大学を卒業した沙織はこの会社に就職してきた。
最初は驚いたが、従兄だからって何かがあるわけじゃなし、仕事は仕事、部署も違うわけで、対して気にはしていなかった。
今まで俺は一切沙織をそういう目で見たこともないし、
むしろ見れる気がしない。
俺の中で沙織は、一人の女というより、妹、家族のような存在に近かった。
その沙織が・・・・
沙織が俺を男として見ていたことに、なにより驚きを隠せなかった。
『・・・あたしが従妹だから。だからそんな風に見れないの?』
沙織がうつむきがちにつぶやいた。
『当たり前だろ。今までお前をそんな風に見たことねえよ。』
確かに、歳が離れている分、
俺は妹のように見ていたが、
沙織は逆に、
良く言えば大人に見えたのかもしれない。
少しため息をつきながら、
沙織の頭をぽんぽんと叩く。
『お前は、俺になんとなく憧れに近い気持ちになってるだけだ。歳が離れてる男が身近にいて、その憧れが恋愛感情だと自分でも勘違いしてんだよ。』
子どもに言い聞かせるように沙織に話す。
『お前、お嬢様育ちだし、世間知らずなとこあるから。俺なんかじゃなくて、他の男をいろいろ見たらそのうち・・・』
『妹扱いしないで!』
急な沙織の大きな声に、言葉が詰まる。
『憧れが恋愛感情だと勘違いしてる?そんなの、俊くんに何がわかるの?あたしがっ・・・あたしがずっと、どれだけ俊くんのこと好きだったかなんてっ・・俊くんに何がわかるの?!』
沙織の目から涙がこぼれる。
・・・沙織・・
『従妹だって、結婚できるんだよ?あたしは俊くんを従兄として見てない。ずっと前から、一人の男の人として俊くんを見てきた。いつか俊くんの彼女になりたいって。付き合いたいって。』
うつむいた沙織から、涙がこぼれ落ちる。
『別に、他の男の人とだって何人か付き合ってきた。だけど、やっぱりダメだった。俊くんと比べてしまう。やっぱり俊くんが好きだと思ってしまうっ・・』
沙織の涙に、ふと先日の圭との時のことを思い出し、
胸がずきんと痛んだ。
突然沙織が、自分のブラウスのボタンに手をかけた。
・・・!
『・・おい。』
止めようとする俺の手を払いのける。
ブラウスのボタンを外し、下着姿になった沙織が俺を見る。
『お前何やって・・』
『・・あたしは俊くんに抱いて欲しい。』
・・・・!
『俊くんをほんとに恋愛感情として好きになって、男の人として見てる。だから、抱いて欲しい。それくらいの気持ちなの。』
目から涙を流す沙織の目は真剣だった。
・・・・・・
『おい。沙織。大丈夫か?』
床に仰向けに倒れている自分の上半身を起こす。
なんとか沙織の下に入れたようで、自分の体の上に沙織が覆い被さるように乗っていた。
『俊くん・・・・ごめん・・っ大丈夫!?』
沙織がそのままの体勢で俺を見る。
『大丈夫。なんともねえよ。』
沙織の頭の上に手を置く。
『お前大丈夫か?どっか痛くねえか?』
沙織の顔を覗きこむ。
その時沙織が、頬を赤らめて少しうつむいたように感じた。
『大丈夫・・・。俊くんこそ、なんともない?』
不安そうに聞いてくる。
沙織がなんともないなら、よかった。
最初の衝撃はあったが、自分も、体にどこか痛みがあるようではなかった。
『なんともねえよ。お前みたいな軽いやつ落ちてきたくらいじゃ。』
まったく・・・気を付けろっつったろ
そう言いながら呆れたように微笑み沙織の頭を撫でる。
目を丸くしその瞳を少しうるわせながら沙織が見上げる。
床に座りながら、俺の両足の間に沙織が入っているような状態。
沙織が俺の胸によりかかるように手をあてている。沙織を抱え込んでいるような体勢だった。
沙織を抱えたまま、立ち上がろうと体を動かそうとしたその時だった。
沙織が
ふと顔を近づけてきて、
唇が重なった。
・・・ーーーーーー
一瞬、何が起きたかわからなかった。
頭がついていかず、体が動かない。
・・・・
ゆっくりと唇を離し、沙織が目を開けてこちらを見上げる。
すぐ近くに沙織の小さな顔がある。
その時、何が起きたか頭が理解した。
『・・・・・・おい』
声を出した途端、沙織が胸に抱きついた。
『あたしじゃ恋人になれないの?俊くんの。』
頭が少し混乱する。
『沙織・・・』
『あたしもう子どもじゃない。一人の大人の女だよ?』
沙織が見上げる。
沙織の言葉の意味を考える。
しばらく沈黙が続いた。
・・・マジかよ。
・・・・嘘だろ。
沙織から目をそらし、
小さくため息をつく。
『沙織。俺はお前をそんな風には見れない。俺はお前の・・・』
『従兄だから?』
沙織がいつになく真剣な表情で、まっすぐ目を見た。
沙織は、親父の弟の一人娘。
俺から見たら従妹にあたる。
小さい頃からよく一緒に遊んだ。
俺の親父は日本で一、二を争う大手電機グループメーカーの社長だ。
沙織の父親は、俺の親父の弟でありながら、親父の電機グループの弟会社の社長でもある。
仕事が忙しい俺たちの父親は、よく俺たちを一緒に遊ばせていた。
沙織を、使用人が多くいる俺の家に預けていたのだ。
中学に行き、高校に入り、
その頃からたまに親同士が顔を合わせる時しか会うこともなくなったが、
大学生の頃、高校に入ったばかりの沙織からまた連絡がくるようになった。
沙織から連絡が入れば、車で沙織を送り迎えしたり、飯に連れていったり、大学生のヒマな時間をもて余していた俺も、沙織に付き合ってよく遊んだ時期もあった。
そのうち、俺は今の会社に就職し、忙しさからあまり連絡をとらなくなっていた。
だが、大学の頃から住んでいるマンションにたまに泊まりにきたりと、忘れた頃に沙織からは連絡がきていた。その頃沙織は大学生であり、ヒマをもて余していたのだろうと思っていた。
そして去年、大学を卒業した沙織はこの会社に就職してきた。
最初は驚いたが、従兄だからって何かがあるわけじゃなし、仕事は仕事、部署も違うわけで、対して気にはしていなかった。
今まで俺は一切沙織をそういう目で見たこともないし、
むしろ見れる気がしない。
俺の中で沙織は、一人の女というより、妹、家族のような存在に近かった。
その沙織が・・・・
沙織が俺を男として見ていたことに、なにより驚きを隠せなかった。
『・・・あたしが従妹だから。だからそんな風に見れないの?』
沙織がうつむきがちにつぶやいた。
『当たり前だろ。今までお前をそんな風に見たことねえよ。』
確かに、歳が離れている分、
俺は妹のように見ていたが、
沙織は逆に、
良く言えば大人に見えたのかもしれない。
少しため息をつきながら、
沙織の頭をぽんぽんと叩く。
『お前は、俺になんとなく憧れに近い気持ちになってるだけだ。歳が離れてる男が身近にいて、その憧れが恋愛感情だと自分でも勘違いしてんだよ。』
子どもに言い聞かせるように沙織に話す。
『お前、お嬢様育ちだし、世間知らずなとこあるから。俺なんかじゃなくて、他の男をいろいろ見たらそのうち・・・』
『妹扱いしないで!』
急な沙織の大きな声に、言葉が詰まる。
『憧れが恋愛感情だと勘違いしてる?そんなの、俊くんに何がわかるの?あたしがっ・・・あたしがずっと、どれだけ俊くんのこと好きだったかなんてっ・・俊くんに何がわかるの?!』
沙織の目から涙がこぼれる。
・・・沙織・・
『従妹だって、結婚できるんだよ?あたしは俊くんを従兄として見てない。ずっと前から、一人の男の人として俊くんを見てきた。いつか俊くんの彼女になりたいって。付き合いたいって。』
うつむいた沙織から、涙がこぼれ落ちる。
『別に、他の男の人とだって何人か付き合ってきた。だけど、やっぱりダメだった。俊くんと比べてしまう。やっぱり俊くんが好きだと思ってしまうっ・・』
沙織の涙に、ふと先日の圭との時のことを思い出し、
胸がずきんと痛んだ。
突然沙織が、自分のブラウスのボタンに手をかけた。
・・・!
『・・おい。』
止めようとする俺の手を払いのける。
ブラウスのボタンを外し、下着姿になった沙織が俺を見る。
『お前何やって・・』
『・・あたしは俊くんに抱いて欲しい。』
・・・・!
『俊くんをほんとに恋愛感情として好きになって、男の人として見てる。だから、抱いて欲しい。それくらいの気持ちなの。』
目から涙を流す沙織の目は真剣だった。