Cross Over





『無いっ・・・。どうしようっ・・・・。』






腕時計を見る。




始業時刻が迫っていた。





朝から会議なのに・・・っ!


なんでこんな日に限って・・・!




自分のトロさに腹立たしさを募らせながら、昨日購入した新品のバッグの中を掻き回す。







あーあ・・・ダメだっ・・


絶対前のバッグの中から、こっちのバッグに移すの忘れてきたんだー・・・




会社入り口の床にペタンと座り込んだ。




上司に怒られる覚悟を決めて、深いため息をついた。





もお・・・最悪・・。どうしようっ・・。









その時。




ふいに頭上から声がした。






『通れねえのか?』











ーーーー。







これが、一番最初の出逢いだった。




恋に『落ちる』とは、よく言ったものだと思った。





この時から、




あたしの心は彼のすべてに落ちていくように、



どんどん彼に引き込まれていったーーー。







ーーーー。






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