Cross Over
次の日。
いつもより早めに出社し、
自分のデスクにバッグを置く。
よし。
一人オフィスを出て、正面ロビーへ向かう。
出社時間帯。
たくさんの社員が、入り口を通る。
そわそわと、
ロビーをうろうろする。
なんか、あたしストーカーみたいじゃない?
自分で思いながら、顔が緩む。
いいもん。
ちょっと見るだけだもん。
・・名前と、部署が知れたら十分。
ふと、自販機が目にとまる。
・・・ちょっと落ちつくために、
飲み物でも買おう。
いつものミルクティーを買い、蓋を開けた。
はぁ~・・美味しい♪
いつもの味にふと落ち着いたその時。
突然、女性社員の黄色い声がロビーに響いた。
『きゃぁーー!!///』
『わぁああっ。なにっなにっ!』
驚き持っている缶を落としそうになった。
『きゃーっ!///』
『見て!今日二人でいる!』
『やぁん♪すごいラッキー♪』
『かっこいい~っ///』
後ろから、女子社員の騒がしい声が聞こえる。
『なっ・・・なにごと・・っ?』
女の子たちの後ろに隠れながら、
その陰からひょっこりと顔を出して、
みんなの見ているほうに視線を向ける。
『きゃぁ!♪来た来たー!///』
・・・・?
眉をしかめながら、女の子たちが見ている会社入り口を見つめる。
その時。
・・・!
あっ・・・・あの人っ・・・
入り口から入ってきたのは、二人の男性社員。
明るい長めの髪をなびかせたニコニコした男性と、
その隣にいたのは、
先日の彼だった。
『きゃぁっ!///めっちゃかっこいい!!♪』
『どうしよー!佐山先輩もいいけど、やっぱり新崎先輩もかっこいいなー♪』
目の前の女の子たちがきゃっきゃっとヒソヒソ話をしている。
佐山先輩・・・と新崎先輩・・・・
その時。
明るい髪の彼が、ふとこちらを見た。
『あっ、みんなおはようー♪』
心に矢が刺さるかのようなドキっとする笑顔で、こちらに向かって手を振った。
『きゃーーーーっ!!!/////』
その途端、ヒソヒソと話していた女の子たちが一斉に叫んだ。
いっ・・・
黄色い声が頭に響き耳を塞ぐ。
なっ・・・・なんなんだこれは・・・っ
耳を塞ぎながらそそくさとその集団から離れる。
・・・・すっ・・・すごい人気者なんだ・・あの二人・・
物陰に隠れながら、二人を見る。
ニコニコと手を振りながら社員入り口に歩いていく男性社員の隣で、
女性社員たちに一切見向きもせず、不機嫌そうに歩いてく彼を見つめる。
・・・・・
ドキっと胸が高鳴る。
ああっ行っちゃう!
そそくさと、二人のあとをつけるように後に続いた。
ちらほらと何人かの社員が歩く社員通路で、少しの距離をとり、耳を澄ましながら後ろを歩く。
『・・朝からうるせえな。』
社員通路に入った途端、不機嫌そうに彼が一言つぶやいた。
『そんなこと言わないのー。きゃー新崎先輩かっこいいー♪って!もう~モテモテなんだからー♪』
茶化すように爽やかな彼が言った。
『・・興味ねえ。』
『新崎先輩ったら朝は不機嫌~♪』
ケラケラ笑う彼に、
いささか迷惑そうな顔で彼は表情ひとつ変えず、ポケットに手をいれて歩く。
そのまま二人は企画部のオフィスへ向かって歩いていった。
新崎・・・・先輩・・。
企画部の新崎先輩・・・・。
ぼーっと、二人の行き先を見つめたまましばらく立ち尽くした。
あの朝から、もう一度彼を見ることができた。
クールで気だるそうな彼の姿が頭に蘇る。
かっ・・・かっこいい・・・っ・
ーー・・////!
その途端、ふと我にかえり、
ぶんぶんと首を振る。
ダメだダメだっ!
あんなにかっこいい人を好きになったりなんかしたら!
絶対っ・・・ぜーーーーったいあたしなんかじゃ無理だしっ!!!!!////
くるりと背を向け、自分のオフィスに向かって歩く。
・・・・・。
だが、すぐにまた、先程の彼の姿が頭に思い浮かぶ。
・・・・・・/////。
思い浮かべただけで顔が熱くなるのを自分で感じる。
あーーーっ!!////もおーーーっ!!
消そう消そうとしながら、
その日はずっと彼が頭の中をよぎり、
仕事が手につかなかった。