Cross Over





あれから、彼を会社の中で自然と探してる自分がいた。




たまたま通路で見かけたりした時には、



跳び跳ねそうなほど胸が高鳴り、



ドキドキと鼓動が止まらない。







『はぁ・・・』





澪とのランチ中、深いため息をつく。







『?どしたの?ため息なんかついて。』






お気に入りのパスタを頬張りながら澪がつぶやく。







『ん?ううん。なんでもないの。』




澪に笑みを向ける。





ふ~ん、と言いながらパスタを口に入れ、澪が言った。








次・・・いつ彼を見れるだろう。


どっかで・・会えないかなー・・・。





自然とそう考えた途端、ふと我にかえり、

ぶんぶんと首を振った。






だめだめだめっ!!何考えてんのっ!///

こんな風に思ってたらまるで・・・・





『恋だな。』






澪の言葉が聞こえて、

飲んでいた水を吹き出しそうになる。






『ちょっ・・・ちょっと澪っ!///違うからっ!///』





澪がニヤリと笑う。




『怪しい~っ。だれだれ?』




顔を覗きこんでくる澪から顔をそらす。





『違うってばー!///』





ケラケラ笑う澪を叩いた。






恋か・・・。







澪の言葉に胸がきゅっと苦しくなった気がした。



ーーーー。










ランチが終わり、カフェを出る。




あーお昼からだるいなー、手を上にあげて、背中を伸ばしながら歩く澪を横目に、




ふと、会社の正面入り口の外れに目を向ける。






っ・・・!新崎先輩っ・・・!










入り口から少し外れの植木の近くに、


新崎先輩が立っていた。




新崎先輩の向かいには、知らない女子社員が立っていた。







・・・・・。




立ち止まり、様子を伺う。






話し声までは聞こえないが、



何か女子社員が新崎先輩に向かって話している。




その女の子の話しを、
新崎先輩は缶コーヒーを片手に、もう片方の手はポケットに入れながら聞いているようだった。







なんだろ・・・もしかして・・彼女とか?





胸が脈打つ。




彼女にしては様子が違う気もする。






その時、女の子が可愛くラッピングされた小さな袋を新崎先輩に差し出した。





あっ・・・・





何かプレゼントを渡しているようだった。
さらに手紙を新崎先輩に手渡している。







新崎先輩がポケットから手を出し受けとると、

恥ずかしそうに女子社員は走って行った。






新崎先輩は、表情ひとつ変えず、

手紙とプレゼントをちらっと裏返しながら見て、体の向きを変えた。



そして、缶コーヒーを飲みながら、

足早に会社の中に入って行った。









『莉菜!何してんの?』






遠くから澪の声が聞こえた。






『あーごめんごめん!今行く!』





振り返り立ち止まっている澪の元へ
小走りに駆け寄った。










・・・・はぁ。






ため息がもれた。





わかってはいたけど、




やっぱりモテるんだ・・。




狙ってる子いっぱいだよねそりゃあ・・・。








『莉菜・・あんた今日なんか変だよ・・?』





隣から澪の声が聞こえ、はっと澪を見る。




『そっ・・・そんなことないよっ!ちょっとミルクティー買ってくるね!』





先戻ってるよーと言う澪を見届けたあと、

ロビーの自販機に近寄る。










はあー・・・。




ため息をつきながら、自販機のボタンを押す。




あんなにかっこよくて・・モテる人じゃ・・。


あたしなんか近寄れないよ・・もう覚えてもないかもしんない。





ミルクティーの缶を取り出す。



肩を落としながら



缶のふたを開け少し飲む。







ため息をつきながら、ゆっくりと

オフィスに向かおうと通路を歩き出した。




その時。







向こうから

少しいつもより急ぎ足で、書類を持って歩いてくる新崎先輩が視界に入った。






え・・・!!



・・・新崎先輩っ!?





思わず立ち止まる。







・・・・っ////
 






その時、




視線に気付いたのか、歩きながら新崎先輩が顔をあげた。







ーーー・・!////







視線がぶつかる。







新崎先輩が、


あ、と何か気付いたかのように足のスピードを緩めた。








『・・・おっ・・お疲れさまですっ!///』







よく言葉を発することができたとこの時の自分を褒め称えたい。





新崎先輩との距離、約2メートル。





自分でもわかるほど、心臓が脈打つ。





顔が、熱くなる。






その直後。












『ああ。お疲れ。』









そう言いながら、


新崎先輩は、ふっと目を細めて笑みを向け、


すれ違い、通りすぎて行った。






ーーー。



私の目の前の全てが一瞬、止まったように思えた。



完全に

ーーー新崎先輩に心を乗っ取られていた。





もうダメだった。











あたし・・・



新崎先輩を好きになってしまった。











鼓動が張り裂けるように高鳴っている。



でも、


きゅっと、締め付けるように胸が苦しくなる・・・・。







新崎先輩が歩いていったほうを振り返る。






角を曲がっていく新崎先輩の背中を見つめた。









ーーーー久しぶりに感じたこの感覚。

胸がドキドキする度苦しくなる。










その余韻に浸ったまま、


そのまましばらく立ち尽くした。









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