Cross Over



ーーー。


しばらくして。




ふと、
エレベーターの明かりがついた。





『あっ・・・』




先輩の腕の中で、上を見上げる。




先輩も少し腕を緩ませながら、上を見上げた。






その直後。

大きな音がして、ゆっくりエレベーターが動き出した。






動いたっ・・。




ほっと、安心し、体の力が一気に抜ける。







『よかったな。』






ふと、先輩の声がして、隣を見上げる。





安心したような優しい笑みで先輩がこちらを見ていた。





『・・・はいっ』




安心したことと、幸せな気持ちが溢れて、


笑顔で先輩を見上げた。









ーーー。





エレベーターを降り、会社から外へ出る。

 



数歩先を歩いていた先輩が立ち止まり、こちらを見た。






『もうこんな時間だけど。どっか、飯でも行くか?それとも、もう帰るか?』





ポケットに手をいれ、先輩が言う。





腕時計を見る。




針は10時すぎをさしていた。






 
 

・・・先輩と、



まだ離れたくない。






うつむき、考える。






突然のことだったが、


先輩とこんな風になれて・・・。




この幸せをまだ、噛み締めていたいのと、



単純に、お互いの気持ちを知ったところ尚更のこと、




新崎先輩と



離れたくなかった。








・・・でも。




うつむいたまま考え込む。







新崎先輩は疲れてるかもしれない・・・。


もしかしたら、明日も早いのかもしれない。





あたしがまだ一緒にいたくても、


新崎先輩は・・・





『俺は大丈夫。』






ふと聞こえた新崎先輩の声に、

顔をあげる。









ポケットに手を入れたまま、



こちらを見ながら、新崎先輩がふっと微笑んだ。






『俺はどっちでも大丈夫だから。莉菜が好きなほう、選んだらいい。』






ふと目を細めて微笑んだ先輩を見て、




 
きゅっと胸が切なく苦しくなった。










どうしてあたしが今考えていたことを・・




・・あたしの考えてることが、先輩にはお見通しなんだろうか。








やっぱり・・・




先輩のこと好きだっ・・。









胸が苦しいほど想いが募る。





新崎先輩が・・大好きっ・・









『まだ・・まだ一緒にいたいです・・っ』






きっとこの時の顔は真っ赤だっただろう。



自分でも、顔が熱くなるのがわかった。







私の言葉を聞いた新崎先輩が、


ふっと声を出して笑い、




左手を差し出して言った。






『俺も。』






先輩を見上げると、優しい微笑みで、先輩はこちらを見つめていた。






・・・

幸せと嬉しさで胸がいっぱいになる。







微笑んで駆け寄り、



差し出された先輩の左手を、


右手で繋いだ。




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