Cross Over



停めてある車に向かおうと歩き出したその時、





遠くから救急車のサイレンが聞こえた。





救急車・・・どこか近くまで来てるのかな・・






特に気にせず、先輩の手を握ったまま、足を前に動かす。





だが。



救急車のサイレンが次第に大きく聞こえ始めた。






ふと、サイレンがするほうに視線を向け、足の速度を自然に緩める。






ビルが立ち並び、まだそれは視界には入らないが、


耳を塞ぎたくなるほどの、かなり近くまで来ているような大きな音が耳に響く。








『近くで何かあったんですかね。こんな時間に・・・』





ふと、先輩のほうを見上げながら声をかけたその時ーー。






目に入った先輩の様子に、目を見開き、動きが止まった。







ーーー。







呼吸が思うようにいかないのか、胸元を苦しそうに抑えて、肩で息をしている先輩がいた。







ーーーー・・・・!







『・・・先輩!!どうしたんですか!?大丈夫ですか!?』





突然のことに動揺し、先輩の体を支えようとする。




徐々に苦しそうになる先輩が、大きく肩で息をしながら、言葉を出した。





『大丈夫・・・悪い・・少し経てば・・落ち着く・・から』





そう言いながら、苦しそうな表情で、徐々に肩が大きく上下し、呼吸が荒くなる。






『先輩っ・・!先輩・・!』






苦しそうに肩で息をしながら、

細い路地裏の道の途中、外れにある細い脇道に先輩はふらつきながら入った。


救急車のサイレンが壁に挟まれて少し小さくなった。





先輩を支えるようにしていたが、先輩はそこで崩れるように座り込んだ。







どうしようっ・・っどうしようっ・・



動揺し、慌てふためく。




どうしたらいい・・・どうしたらいいの・・誰かっ・・




誰か呼ぼうと周りを見渡した時。



先輩が私の腕を掴んだ。





『大丈夫・・・すぐ・・落ち着くから・・』






苦しそうな表情でこちらを見た先輩に、

焦る気持ちが更に加速した。


 


『先輩っ・・どうしたらいいですかっ・・どうしたら楽にっ・・』





徐々に目に涙が溢れてくる。





路地裏の壁に背をつけて、苦しそうに先輩が呼吸を整えようとする。




先程より、少しは肩の上下が小さくなった気がした。






どうしようっ・・・誰か呼ばないとっ・・・



涙目になり、動揺したまま先輩の隣りで立ち上がり、周りを見渡した。





『・莉菜・・』




『ちょっと待っててくださいっ。誰か・・誰か呼んできますっ!』






繋いでいた先輩の手をぎゅっと握り、そう言ったあと、路地裏を駆け出した。





周りを見渡しながら、走る。





どうしようっ・・誰かっ・・



広い道路が見えた。




そこまで行けば誰かっ・・





一目散に走る。






ーーーー勢いよく、道路に出た瞬間だった。






車のクラクションが右から聞こえた。







ふと、右を見る。




ーーーー・・・・っ







まぶしいライトが視界全てを覆った。




ーーーーー。





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