Cross Over



そのあと。



下のバーに行き、食事をとってビルを出た。



新崎先輩が佐山先輩とよく来るというその店は、


一見綺麗な女性だと勘違いするほど美人なオーナーが経営している店だった。


先輩たちが、シゲちゃんと呼んでいるその陽気なオーナーは、本当は男性であり、私たちの話を聞き、とても祝福してくれた。



『莉菜ちゃんもまた来てねえ~♪次は弘斗ちゃんも連れてくるのよ~♪』



お酒を片手に手を振るオーナーに、笑顔を向けて店を出る。




車に乗ると、私の家まで先輩は車を走らせた。








『先輩と離れたくないな。』


車内でぽつりとつぶやく。




昨日から一緒にいる中で、たくさんの話をした。



先輩といると、心が安らぎ安心する。



一緒に居れば居るほど、離れるのが嫌になる自分がいた。






『俺だってまだ一緒にいたいと思ってる。』




前を見ながらハンドルを握り、先輩が言う。




『でも、今までとは違う。ずっとこれからは、莉菜の傍にいるし、俺が守るから。』






信号で止まった車内で、こちらを見て先輩が言った。






『・・はいっ。』





先輩の優しい中に強さのある言葉と表情を見て、


幸せがあふれ、うなずいた。







家の前に到着すると、車を降りる時に、



先輩が手を掴み引き留めた。




そのまま車の中で先輩の腕の中に引き寄せられる。






『また明日。会社でな。』





そう言い体を離すと、軽く唇を重ねる。





『ありがとうございました。おやすみなさい。』





『ああ。おやすみ。』






車から降り、先輩に手を振る。




運転席から軽く手をあげた先輩の車が、見えなくなるまで見送った。







離れた後も、幸せな気持ちが溢れてくる。





先輩からもらったネックレスに触れる。





お互いを理解し合える人がいる。


守りたいと、思えて、思ってくれる人がいる。



それだけでこんなに強くなれる。








家の方に体の向きを変える。





さ、明日、たくさん報告しなきゃねっ。




自然と顔を綻ばせながら、


家に入った。




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