Cross Over



『きゃぁーーーーっ!!!////』



『澪っ!!!』



突然叫び声をあげた澪を、


こちらを見る周りの目を気にしながら、静かにしてと制止する。






『・・・それマジ?///』





澪が顔を近付けて覗きこむ。




コクリとうなずいた。






ひゃぁっ!///と口に手をあて、澪が驚いた表情でこちらを見る。





照れくさくなり、顔を赤らめてうつむいた。









昼間の会社のカフェ。




一番報告しなければいけない人に、報告したのはいいものの、



案の定まわりが振り向くほどの声を出される。







『莉菜ーっ!!やったじゃんおめでとーーーーっ!!♪////』



『イタっ・・澪イタイって・・・』



バシバシと肩を叩く澪を制止させる。





『いやーよかったよかった♪なんか、二人はうまくいくと思ってたんだよねー♪』




澪が、ふふんと鼻をならしながら腕を組む。



『澪のおかげだよ。ほんとにありがとう。』





まっすぐ澪を見つめてお礼を言う。





『ぜーんぜんっ。もうチケットを渡した時の新崎先輩の様子から、なんか上手くいく気はしたんだよねー。親友の勘ってやつ?』




澪がうんうん、と一人納得したようにうなずく。






ふふふ、と笑いながら澪をふと見つめる。




『記憶のことと・・・事故の前、新崎先輩のこと好きだったこと・・。内緒にしててごめんね・・。』




ふと、うつむきながらつぶやく。





『びっくりはしたけど、もういいのっ。記憶のことも、心配かけないようにって言わなかったあんたの気持ちもわかるから。』





澪が笑顔を向けて言った。





その表情に安心すると、

澪がふと眉をしかめた。





『でも・・』




『でも・・・?』




顔を覗きこむ。






『沙織がまさか新崎先輩を狙ってたなんて。しかも、あんたにそんなひどいこと・・・。』




『・・・・』





今日の朝、沙織に会ったが、目があってもふとそらされた。



話しかけようとしても、顔を合わせないように避けられているようだった。



 

沙織の表情は怒っているようではなく、


むしろ、



悲しそうに見えた。








いつもあんなに綺麗な顔で笑う沙織ちゃんが、



あんな表情するなんて・・・。








『あんた。まさか・・・沙織を許そうとか言うんじゃないでしょうね?』




澪が眉をひそめてこちらを見る。





ふと、視線を落とした。





『・・・・確かに。沙織ちゃんにされたことは、今考えても手が震えるほど怖かったよ。』




自分の右手を見つめる。





『でも・・』




視線を前に戻す。





『あたし、忘れてた沙織ちゃんとの記憶も思い出したの。あの時全部。』





澪が何も言わずこちらを見つめている。





『事故に会う日の少し前。沙織ちゃんに言われたの。新崎先輩のことが好きだから、だからもし新崎先輩を好きなら諦めてほしいって。』






『えっ・・・?』





澪がテーブルに肘をついて、眉をしかめる。





澪にうなずいて、言葉を続ける。




『確かに、やり方はちょっと間違ってたかもしれないけど。でも、沙織ちゃんは沙織ちゃんで、まっすぐ新崎先輩のこと想ってたんだよ。』





澪のほうを見る。




『だから、あたしは沙織ちゃんのことをなんとも思ってない。また前みたいに沙織ちゃんと笑って話したい。』





笑って澪を見ると、


しばらくして澪が、はあとため息をついた。






『・・あんた。どんだけ人がいいのよ。』





呆れたように澪が言う。





『・・・っ!でも沙織ちゃんには沙織ちゃんの、新崎先輩のこと好きな気持ちがあったはずだから、だから・・』




あーはいはいはい、わかったわかった、と呆れたように澪が掌を向けた。




ふと、息をついて、微笑んで澪が私を見る。





『・・・新崎先輩は、あんたのそーいうとこが好きなのかもね。』





『・・・・////』





澪がニヤリと笑って、テーブルに頬杖をつく。





『そんな綺麗なネックレスまでもらっちゃってさーっ。』



『・・・・っ///』





この幸せ者ーーーっ♪と肩を叩く澪に、顔を赤らめながら、制止しようとしていると、



ふと声が聞こえた。








『あれー!莉菜ちゃーん!澪ちゃーん!♪』






声がしたほうを澪と一緒に振り向くと、

佐山先輩がこちらに向かって手を振っていた。





『あっ、佐山先輩っ!』




ニコっと笑顔を向けて足早にこちらに近付いてきて、


佐山先輩が隣に立った。






『莉菜ちゃん!おめでとう!!新崎から聞いたよー!!』




私の手を握ってぶんぶんと振る。





『あっ・・ありがとうございますっ』





『やっぱ、持つべきものは友達だよねー♪俺と、澪ちゃんのおかげ?なんつってー♪』




ですよねーと澪が笑い声をあげ、佐山先輩と笑い合う。





その姿を見て、自然と笑みがこぼれる。



『ほんとに澪と佐山先輩のおかげです。ありがとうございましたっ。』




佐山先輩にペコリとお辞儀をする。





『なんのなんのー♪』




佐山先輩が顔の前で手を振る。





『あの新崎をここまで惚れさせた莉菜ちゃんはすごいっ。俺らの力なんかじゃないよっ。』




・・・・///




顔を赤らめて澪を見ると、

テーブルに肘をつきながらこちらを見て、うんうんと優しい笑顔で澪がうなずいた。





『あいつって、無表情だし不器用だし何考えてるかわかんないとこあるけど。莉菜ちゃんあいつのことよろしくねっ♪』




ニコっと笑顔で、少しかがんで顔を覗きこみながら、

佐山先輩が言った。





その時。











『・・・・誰が無表情で不器用だって』







後ろから聞こえた声に、ふと顔をあげた。







・・・・新崎先輩っ・・!////







佐山先輩を呆れた表情で見下ろすように、新崎先輩が立っていた。





『お!♪来た来たっ♪』




佐山先輩が新崎先輩のほうを振り向き、微笑む。






新崎先輩がちらっと、こちらを見る。



視線がぶつかる。






・・・・っ////





その時。



新崎先輩がふと息をつき、ポケットに手を入れ微笑んだ。




『昨日はゆっくり休めたか?』




こちらを見て、優しく目を細める。







『・・・っ・・・////』





いつも見ていたはずのスーツ姿の新崎先輩を見て、


胸がドキドキと高鳴り、言葉が出ない。




一昨日から昨日にかけての新崎先輩とのことが、一気に頭を駆け巡り、


顔が熱くなる。








『はっ・・・・はいっ////』






ふっと、新崎先輩が微笑む。






『ネックレス。似合ってる。』





新崎先輩がちらっと首元を見て言う。





あっ・・・・



自分の首元のネックレスにふと触れる。




『あっ・・・ありがとうございますっ・・////』





あーーっ・・・どうしようっ・・////ドキドキして先輩の顔をまともに見られないよっ・・・





胸がドキドキと脈打つ。





新崎先輩はこんなに余裕そうなのに・・・っ



・・・・///




ふと、ベッドの上での新崎先輩の様子が頭をよぎる。





その途端、一人で顔が熱くなる。





なっ・・・・何思い出してんのあたしったら・・っ・////ばかばかーーっ・・///






『莉菜?どうした?』





自分の中で恥ずかしさと葛藤していると、



新崎先輩が顔を覗きこむ。






あっ・・・///、と気付いたように

ふと、顔をあげる。





『いっ・・いえ・・///』




包むように何も言わず見つめる新崎先輩を見上げて、段々と気持ちが落ち着いてくる。


『なんでも・・・ないですっ・・///』





頬を赤らめてつぶやいた。







その時。




ふと気付くと、澪と佐山先輩が隣のテーブルに移動していた。


見るのを恥ずかしそうに手で目を隠しながら、その指の隙間からこちらを見ている。二人して同じポーズで、じーっ・・・とこちらを見ていた。





振り返り新崎先輩が呆れたようにため息をつく。








『あのー・・・。』


そのままのポーズで佐山先輩がこちらに向けて片手をあげる。



『私どもも、そちらのテーブルに参加させて頂いてもよろしいでしょーかっ。』




おどけた声で佐山先輩が言った。








・・・・




『・・・あははははっ!』




しばらく見つめたあと、笑いが込み上げてきた。




バカ野郎、早く座れ、と新崎先輩が呆れたように促す。




澪と佐山先輩が笑いながら、こちらに来る。




4人で笑いながら、
同じテーブルに座った。



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