Cross Over
澪と佐山先輩がお酒を豪快に飲みながら、わいわいと掛け合い騒ぐ。
そこに新崎先輩が淡々と突っ込みをいれ、私が笑う。
この4人の時間はとても楽しくて、心がスカッと洗われるようだった。
そして、騒がしい中にも安心感があり、心が穏やかになる気がした。
『ところで、莉菜のコンクールもうすぐだねっ』
飲み始めてしばらく経ったころ、澪がふと言った。
『うん、そうだね。』
うなずいて澪に返す。
『あと、3週間きったとこか。』
『楽しみだね~!みんなで観に行くからね♪』
新崎先輩のあとに佐山先輩が笑顔で言った。
『はいっ』
笑顔で返すと澪が、つまみに手を伸ばしながら聞く。
『もう仕上げの段階って感じ?』
澪の質問に、ふと視線を落とす。
『・・・うーん。実はねっ。』
少し考えたあと、言葉を発した。
『すごい土壇場なんだけど、やろうと思ってた曲を変えたいと思って。』
『『えっ!?』』
お酒を飲んでいた澪と佐山先輩が、手を止めて驚く。
『今から変えても、大丈夫なものなのか?』
新崎先輩がテーブルに肘をついて聞く。
『技術的には、ずっと弾いてる曲だから大丈夫だと思うんですけど・・・。ずっと迷ってて・・。でもやっぱり弾きたいなって気持ちが拭えなくて・・。』
少し考えるようにグラスを見つめたまま、言葉を続ける。
『でも曲自体が、許可をもらえるかどうか・・・』
目を丸くしていた澪が質問する。
『曲がって・・・どんな曲弾こうとしてるの?』
澪の顔を見たあと、
少し顔を赤らめてうつむき答える。
『・・・前に自分で作った曲を、弾けたらいいなと思って・・・。』
私の言葉に、佐山先輩が声をあげた。
『えーーーっ!!!!めっちゃいいじゃん!!』
『莉菜、自分で曲作れんのーーーーっ!?!?』
興奮する二人を顔を赤らめて制止する。
『まっ・・!まだそれを演奏できるとは決まってないからっ・・・///』
えー!すごーいその方がいいよー!と、盛り上がる二人を横目に、
新崎先輩がこちらを見る。
『あとは、その曲に変更してもいいか許可をもらえればってことなんだな。』
新崎先輩が話したあと、ゆっくりグラスを傾ける。
『はい。そういうことです。』
新崎先輩を見て頷いた。
『聴きたーーい♪莉菜の作った曲ーーっ。』
『俺も聴きたーーいっ!』
澪と佐山先輩がテンション高く、手をあげる。
二人を見ていると、新崎先輩が声を出す。
『その曲は、いつ作ったんだ?』
新崎先輩の言葉に、はっとして顔をうつむける。
『それは・・・あのっ・・。』
新崎先輩の質問に、残りの二人も私の顔を見る。
無言が続く。
『・・・・・/////』
佐山先輩が声を出す。
『えっ!それもしかしてっ!新崎に関係あるとか?』
佐山先輩の言葉に、ドキっと胸が鳴る。
『えっ・・・!////いやっ・・・それはっ・・///』
『きゃーーーっ////なにそれーー♪めっちゃいいーーーっ♪』
澪がわくわくした様子でこちらを見る。
『・・・・・っ////』
一気に顔が赤くなり、顔をうつむける。
『俺に関係あるのか?』
新崎先輩の声に、ふと顔をあげる。
新崎先輩は優しくこちらを見ていた。
『あのっ・・・・』
うつむき答える。
『はい・・・////』
コクリと頷いた。
『きゃーーーっ♪莉菜、新崎先輩のこと想って作ったの?!』
『え!?それ、ずっと弾いてた曲ってことは、結構前に作った感じ?!』
澪と佐山先輩がお酒を片手に質問を投げ掛ける。
『あぁっ・・っ・えっと・・っ・///』
慌てていると、新崎先輩が呆れたように二人を見る。
『お前ら。ちょっと落ち着け。』
こちらに視線を戻し、ゆっくりグラスを持ちながら新崎先輩が話す。
『付き合う前に作ったのか?』
優しい目の新崎先輩から、恥ずかしそうに視線を落とす。
『・・・そうです////』
ひゃぁっ!///と佐山先輩が恥ずかしそうに目を手で塞ぐ。
『もっ・・もう恥ずかしいから聞かないでくださいっ///』
澪がきゃっきゃっと騒ぎながらお酒を飲んでいる中で、
佐山先輩がグラスを片手にこちらを覗きこむように見る。
『恥ずかしがっちゃって、か~わいーっ♪莉菜ちゃん、こいつやめて俺の彼女にならないっ?♪』
『佐山。殺すぞ。』
新崎先輩が腕を組んだまま、冷静に佐山先輩に返す。
『その曲、弾ければいいねっ!!』
澪が目を見開いてこちらを見た。
『うんっ///弾けるかどうか。明日言ってみる。』
みんなが微笑んで見つめる中、
笑ってコクリと頷いた。