Cross Over
『莉菜ーっ!!!!』
人が行き交うホールの2階ロビーで、
澪が走り寄ってくる。
『澪ーーっ!♪』
笑顔いっぱいに手を開くと、澪が駆け寄ってきたまま抱きついた。
『莉菜ーーーっ!♪すっっっごいよかったよーーーー!!!!』
背の高い澪がぎゅーっと力を入れて抱き締める。
うふふふ、と笑いながら澪の背中に手をまわす。
『ありがとう澪っ。』
澪の背中越しに、沙織、佐山先輩、そして新崎先輩が歩いてきた。
『先輩。お疲れ様です。』
沙織が微笑んで、花束を差し出す。
『わあーーっ沙織ちゃんありがとうっ』
綺麗な色とりどりの花束を受けとる。
『・・・莉菜ち゛ゃん゛・・・っ!!ずっっっごい感動じだよっ・・・・俺゛っ・・!!』
鼻と目を真っ赤にして、涙声で佐山先輩が肩を叩く。
『あはははっ。佐山先輩っ。ありがとうございますっ。』
『もうっ・・・』
呆れ顔で、沙織がハンカチを佐山先輩に差し出すと、
・・・あ゛り゛がどぉ・・っ、と鼻をすすりながら涙声で受け取った。
ふふふ、とその姿に笑ったあと、ふと新崎先輩を見上げた。
『お疲れさん。すごいいい曲だった。』
ふと、先輩が微笑んだ。
『先輩・・・っ』
先輩が目を細めて頭を撫でた。
『・・・な゛ん゛だごら゛っ・・お前もさっきまで涙浮かべてたくせに・・っ。お前だけかっこつけやがってズルいぞ・・っ』
ハンカチで目と鼻水を拭った佐山先輩が、新崎先輩に言う。
『うるせえ。』
『ほんとにすっっっごいいい曲だったよ!莉菜が作ったなんてほんとにすごい!!』
騒ぐ佐山先輩を冷静に蹴落としている新崎先輩を横目に、澪が目をキラキラさせる。
『全然っ。でもうまくいってよかった。自分では満足してる。』
すごかったよねー、と微笑む沙織と澪に、
照れながら話していると、鼻をかんだ佐山先輩が声を発した。
『よーし♪じゃあ、このあと、みんなでかんぱーーいっと行こうぜーーっ!!!』
イェーイ!!♪と澪が両手をあげる。
沙織が呆れたように微笑んでその様子を見つめる。
『ゆっくり着替えて来いよ。下で待ってる。』
隣に立った新崎先輩がこちらを見て、優しく目を細めた。
『・・・はいっ。』
先輩の優しい表情に、一気に力が抜け安堵感でいっぱいになる。
先輩を見上げ、返事をして微笑んだ。
あ、そーいえば♪と、佐山先輩がこちらを見る。
『今日の莉菜ちゃんちょ~~セクシーだよねー♪俺、そゆの大好きっ♪』
『佐山。今日お前だけ禁酒。』
腕を組んで見下ろす新崎先輩に、
本当にごめんなさいそれだけは勘弁でお願いします・・と佐山先輩が手を合わせる。
澪と沙織がクスクスと笑いながらこちらを見る。
澪がふと、耳元に寄りつぶやく。
『さっき、四人でいた時、佐山先輩がね。
莉菜ちゃん今日すっごい綺麗だねって言ったの。
そしたら新崎先輩が、
何も言わず顔赤くして、・・あいつは元から綺麗なんだよ・・って。あの新崎先輩が照れっちゃってさーっ♪』
ニヤリと澪が微笑む。
新崎先輩が・・・?////
新崎先輩の方を見る。
次言ったら一生禁酒だからな、と佐山先輩といつものクールな様子で掛け合っている。
先輩・・・///
顔が赤くなる。
『まっ・・・ゆっくり準備してきて♪待ってる♪』
あとでね、と手を振る四人を見届け、控え室への通路に向かい、歩き出す。
・・・新崎先輩がそんなことっ・・・////
通路を歩きながら一人頬を赤く染める。
・・・・すっごい嬉しいっ。あの先輩が照れてっ・・
『・・・・////』
歩きながら、赤く染めた頬に両手をあてる。
今日はいっぱいみんなで楽しもうっ
そのあと・・・いっぱい新崎先輩とっ・・・
『・・・っ/////』
想像して頭から湯気が出そうにぼーっとしていると、
ふと後ろから声をかけられた。
ーーーー。
『黒川莉菜さん。』
落ち着いた低い声に、ふと我に返り、後ろを振り返る。
目の前に、一人の初老ほどの男性が立っていた。
『・・・・?』
この人は・・・
『少し、お時間をいいかね?』
振り返って立ち尽くしていると、その男性がふと、微笑んだ。