【完】クールな同級生と、秘密の婚約!?
俺の視界に入ってきたのは、見たことのない男とふたりで買い物をする亜瑚の姿。
それはどこからどう見ても、亜瑚だった。
笑い合うふたりの様子からは、嫌でも親しげな関係が見て取れる。
亜瑚は男の手を引き、店内の商品を見ている。
「ねぇ、これ良くない?」
「亜瑚ちゃん、センスあるね!」
「えー! 拓ちゃんだって!」
屈託のない笑顔を男に向ける亜瑚。
「……っ」
……やめろ。その笑顔を、俺以外の男に見せるな……。
笑いあってることも、親しく名前を呼び合ってることも、全部気に入らない。
俺はその光景を、離れた場所から見つめることしかできない。
床に足が貼り付いてしまったかのように、間に割って入っていくことができない。
心の中から、ドロドロとした、暗く重いものが溢れ出てくる。
そしていつの間にか、俺の頭の中はあの“トラウマ”に乗っ取られていた。
俺は……俺は……。結局また裏切られるんだ……。
また捨てられるんだ……。
また──。