【完】クールな同級生と、秘密の婚約!?


「こんなところに水道があったなんて知らなかった」


「穴場だよな」


水道の方からそんな声が聞こえてきてきた時には、私は校舎と倉庫の間で抱きしめられていた。


「みっ……」


「黙ってて」


耳元で囁かれ、息をのむ。


狭いから抱き合わなきゃふたりで入れないのはわかるけど、あまりに近すぎる。

こんなに密着していては、この暴れ狂う心拍数が、湊に伝わってしまう。


息を潜めて隠れていると、流れる水の音が聞こえなくなり、グラウンドの方に戻るのか、ふたつの足音は遠ざかっていった。


いつの間にか止めていた息を、大きく吐き出す。


「行ったみたいだな」


「うん」


「いいとこで邪魔しやがって」


腕の中で見上げると、むすっとした顔の湊。


「ふふ。怒ってる?」


「怒ってる。でもま、帰ったら、たっぷりさっきの続きするからいいけど」


「なっ!?」


かぁぁぁっと頬が熱を持つ。

湊の甘くて意地悪な一言一言には、まだ慣れそうにもない。


そんな私にはお構いなしで、湊はふっといたずらに笑うと、私の額にキスを落とした。





< 189 / 238 >

この作品をシェア

pagetop