ここでキスして。
てっきりテレビでも見てるのかと思ったら、いつの間にか横になって寝てるなんて。
早すぎでしょお坊っちゃま。
私あなたの家政婦じゃありませんよー。
「……ん」
遙が身動ぎする。
私の心の声が聞こえてしまったのかと思って一瞬焦ったけど、変わらず遙は静かな寝息を立てていた。
おでこにかかった前髪が重力に負けてサラリと下に垂れる。
男の子なのに長い睫毛とスッとした鼻筋が露になる。
「……黙っていればカッコいいんだけどな。」
いつからだろう。
遙が私のことを「美弥ちゃん」と名前で呼ばなくなったのは。