ここでキスして。
ここで眠る。
次の日。
現在、必死に数学の課題を伊織ちゃんのプリントと照らし合わせながらやっている。
うん、つまり写させてもらってる。
昨日遙の家に行ったことで1日分の体力を使い果たしてしまって、とてもじゃないけど課題なんて出来なかった。
なんとかお風呂だけは入って、即行ベッドへダイブ。
それだけ遙と話すのは神経を使ってしまう。
だって昨日話したのも久しぶりだし。
幼馴染みといっても、学校ですれ違ってもお互いにスルーだし、用事も特別話すこともない。
ていうか、向こうが関わるなオーラを出してるから、こっちはすれ違うたびにビクビクしてるんだけど…。
「ありがとー伊織ちゃん!」
「貸しは高いよ?」
「今度何か奢らせていただきます!」
なんとか次の授業までに写し終えて、自分の席に戻る。
よかった。
この授業って順番に当てていくんだよね。
私の席は窓際の後ろから2番目。
わりといい席だけど、今日はこの列が当たる日だ。
いつもなら聞き流してる数式も、今日だけはいつ当てられてもいいように真剣に聞く真面目ちゃんモード。
「佐倉さん、佐倉さん」
授業中、後ろからツンツンと背中をつつかれる。
ひっそりとした声に振り返ると、ふわふわの色素の薄い茶色の髪が見えた。