ここでキスして。
そんな榛名くんと私は、前後の席だけど実はあんまり話したことがない。
眠り王子の通り名を持つだけあって、いつも寝てるから。
プリントを配るときに後ろを振り向いても、いつも見えるのは机に突っ伏した頭だけ。
そのたびに、やわらかそうな髪が日の光に反射してキラキラしてる。
それがものすごく綺麗で、振り向くときに見えるのが楽しみだったりするのは誰にも言えない。
「佐倉さん、ありがとう」
こっそりと返してくる榛名くんからプリントを受けとると、右端に何か書かれているのに気付いた。
…なんだろ、これ。
人間のような、宇宙人のようなイラスト。
お世辞にも上手ではない。
そこに吹き出しを付けて「さんきゅー」と書かれていた。
榛名くんが書いた、んだよね?
「あれ?似てない?佐倉さんの似顔絵」
私が首を傾げてると、私の肩口に顔を近付けてひょっこり覗いてきた。