ここでキスして。
ここで呼ぶ。
………………
朝、珍しく早く目が覚めた。
いつもは7時に起きるのに、現在6時半。
なんだか二度寝する気分でもなくて、ガバリと起き上がる。
いつもよりゆっくり着替えてご飯も食べたのに、まだまだ余裕の時間。
毎朝時間との勝負の私がこんな優雅な朝を迎えるなんて、自分で自分が恐ろしい。
今日雨でも降るんじゃないかな…。
豪雨レベルの奇跡だ。
いつも家を出る時間より30分ほど早く家を出た。
「誰もいない…」
学校に着くと、人の気配があまりなくてシーンと静まり返っていた。
下駄箱から取り出して床に置いた上履きの音がやけに響く。
こんな時間に学校に来たことがほとんどないから、なんだか変な感じがする。
歩く廊下も私の足音しかしないし。
教室のドアをガラリと開ける。
窓が開いていたのか、カーテンがふわりと大きく揺れて、思わず目を細める。
「わっ」
揺れがおさまると同時に、色素の薄いふわふわの髪が見えた。
「……榛名くん?」
窓際の一番後ろの席で、榛名くんが気持ち良さそうに机に突っ伏して寝ていた。