春-始まりのうた-
始まり
「帰れないなら送ってやろうか?」
「えっ?」
誰もいなはずなのに、
思わずふりむけばそこに彼はいた。
さっきまでライブをしていた
ベース担当のRINが、私に向かって
笑っていた。
「え、っと...なんでRINさんがこんなと ころにいるんですか???」
「それはこっちのセリフな、笑
いつまで出待ちしてんのかと思ったけ ど? 笑」
「出待ちって!そんなんじゃないです!
ただボーッとしてたらこんな時間に」
「ライブ終わって2時間も経つけど」
RINの言葉に驚いた。
「え?今、何時ですか?」
「20時15分だけど?お前大丈夫か?笑」
本当はなに一つ大丈夫なことはない。
だけど、もうなんだっていい。
「大丈夫です!
あの!ライブお疲れ様でした!すごく 良かったです。また見に来ますね!」
今こんな笑顔で話しかけられたら
私の心はどんどん壊れていく。
RINのことは大好きだし
また絶対に見にこよう。
そう思って、宛てもなく帰ろうと
逆方向に歩き出した。
だけどそのときRINは
私の腕を強くつかんだんだ。