春-始まりのうた-
「なにが良かったって?」
「えっ?」
さっきまでの声とは余りにも違って
低く響くような声がした。
「お前、2曲目からなんも聴いてなかったろ。それで何が良かったんだよ。」
「それは、そのーー」
正直RINの変貌ぶりには驚いたけど、
それよりも、RINが私を見ていたことの方がびっくりだった。
「お前、名前は?」
「えっ?」
「お前さっきからそればっか 笑」
あ、RINが笑った。
「哀川瑠衣です。」
「俺は宮森凛。」
「知ってます!大ファンですから!」
RINのかしこまった挨拶に
思わず笑えた。
「もっと笑え、瑠衣は泣くより笑った方がいい。」
「そんなっ 泣いてなんかいません!」
「お前ずっと泣いてたろ、
俺のとこから丸見えだったからな 笑」
私、泣いてたんだ。
てか、なんでそんな私のこと...
「ま、泣いてるお前見て
惚れたんだけどなっ 笑」
「え?...えぇっ??」
「ほんと、そればっかだな、笑」
「そんな!冗談いってもなにもありませ んからね!」
「鞄すらねーもんな、笑
ガチャガチャ女とあの男、全部持って っちまったし。」
あ、そうだった。
私龍樹にすてられたんだった。
「やべ、もーこんな時間じゃん。
お前どうせ帰れねーんだろ?ついて来 いよ。」
「いや、でも...」
「あいつとは終わったんだろ?」
終わったって言われると、
胸が張り裂けそうになる。
だけど、もぉ...
「みんな待ってるから、
行くぞ、瑠衣」
そう言って凛は私の手を握って
関係者以外立ち入り禁止の部屋に
引っ張って行った。