春-始まりのうた-
涙
あれから私はメンバーに連れられて
居酒屋へと移動した。
車の中では皆がわいわい騒いで
ついさっき、自分が男に捨てられたことも忘れられそうだった。
「ねえ、凛さん。」
「ん?どうした?」
「どうして、私を誘ってくれたの?」
「だから、
お前に惚れたからだけど?」
そんなはずないことくらい
私はわかってる。
だからこそ、なんでこんなにも
よくしてくれるのか分かんない。
「なに、信じてないわけ?」
そんなはずないのに、
こうやって低い声で言われると
なんて言っていいのかわかんなくなる。
私なんかを好きになる人なんて
この世にいない。
両親ですら愛してくれなかったのに
他人が愛してくれるはずがないよ。
ねぇ、もしかしてまた
私は捨てられるのかな。