春-始まりのうた-
ーーーガヤガヤ

車の中での一件から、
お店に入ってからは凛はどこかに
行ってしまった。

「あーあ、やっぱ駄目だな」

何故だか急に寂しくなって
一人で項垂れていた。


ーーーードンッ

「お!るーちゃんちゃんと食べてる?」

「おまえ呑みすぎだから!」


だんだん皆もお酒がまわりはじめて
いきなり博音に抱きつかれた。

すかさず「わりぃ!」と、
涼が引きなしてくれると、博音は近くの椅子に倒れ込んで寝てしまった。
これを合図に

「そろそろ開くかー、」
と和が言うと、「おつかれ、」と
大勢いたスタッフたちも解散し始めた。



私も帰らなきゃ、
っと思ったのも束の間。

ここが何処かも分からない。

だけど今この賑やかな時に出て行かなければまた皆に声をかけられちゃう。


スタッフさんに紛れてそっと
居酒屋から出て行った。




おそらく12時を過ぎて、
日付は変わっただろうな。

今日が金曜日でよかった。


そう思いながら明るい方へと
歩き出した。


「龍樹、今なにしてるかなぁ...」


思わず溢れた懐かしい名前。



「なに、まだ好きなわけ?」



「えっ?」



居酒屋から10分くらい歩いたところ。


小さなバス停に凛がいた。



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