彼氏いません。
「またお前か西牟田…」

女子の集団に囲まれている西牟田先輩をみて、高橋先生はため息をついた。

そんな高橋先生を見るためにさらに女子が集まっていることに本人は気づいていない様子だった。

「あのなぁ、西牟田は自分が人目を惹きやすいって自覚してくれ」
「先生、お言葉ですが自覚しています」
「……してるのか」

高橋先生はしばらくしてから口元を緩め

「…まあ、してるならしてるなりにこういう風に、人が集まり過ぎないように配慮してくれ」

そう言った。
めずらしい高橋先生の微笑みに、女子のポケットから携帯が取り出される。
私の目の前にいる雪も、サッと取り出してシャッター音を消して撮っているようだった。

「すみません。でも、今回こうなった原因は…」

西牟田先輩はチラリと私を見る。
その視線に気づいた高橋先生がこちらに寄ってきた。

「高橋、何かしたのか?」
「…お腹が空いたと西牟田先輩がおっしゃるので、クラスの皆にお弁当をわけてあげてと呼びかけたら…西牟田先輩がたくさんの人に囲まれていました」

…うん、嘘は言っていない。
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