彼氏いません。
「お昼休みに教室に来て、私のお弁当に入ってたおかずくれって」
「…あげたの?」
「まさか。あげなかったよ。あげたくないから教室に呼び掛けて、あんな騒動になったの」
「そっか」

樹は柔らかく笑う。つられて私も笑顔になった。

樹は早々とリゾットを平らげ、ごちそうさまと食器を下げた。

「俺お風呂入っていい?桜はもう入った?」
「うん、お先に入らせてもらいました」
「はいよー」

樹がお風呂に向かった後、私も食器を下げて洗い物を開始する。

「あ、樹のお弁当箱がない。また出し忘れてる…まったく」
手についた泡を流し、手を拭いてから樹のカバンの元へ向かう。
お弁当箱を取り出してキッチンに戻り、包みをほどいて開ける。

何も残っていないお弁当箱を見るのは、やっぱり少し嬉しい。
口元が緩んでいるのを感じながらお弁当箱を洗っていると、樹がお風呂から上がってきた。
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