龍桜
***

 前方に挙動不審な奴がいる……誰だアイツ?まさか敵……?いや、違うな……あんな図体でじゃバイクも乗りこなせないはずだ。大体この学校にいるやつはほとんどが¨龍咲¨に所属してる奴等だから俺が知っていておかしくはない。その逆も把握しているはず……だが、前方に見える奴は見覚えがない。とにかく誰か問い詰めなくては……
「誰、あんた」
「ふぇ?」
 声からして女だな……最悪だ。なんで女なんかに声をかけたんだ俺……女なんて面倒くせぇだけじゃないか。そんなことを思いつつ女の方に顔を向けると女も考え事をしていたようだ。
 __女はこっちを向き言い放った。
「ねぇ、初対面の人に向かっていきなり失礼じゃない?」
「はぁ?」
 俺は予想外の発言に思わず素で驚いてしまった。
「だーかーらー、その聞き方はないと思うって言っているんだけど?」
 俺は考えた。この女が何を企んでいるのかを……だが、何も思い浮かばない。とにかく、女の言うことも一理あるからここは謝らなければ……
「……悪かった」
 何故、俺はこんなにも素直に謝っているんだ?しかも女相手に……分からない。だが、見覚えのない奴がいたら警戒するのが普通だろ。俺はそう思い、口にだそうとした瞬間、女が言いかけたのでやめた。
「ま、確かに自分の知らない人が校内をウロチョロしてたら警戒しちゃうもんね!ということでさっきの質問に答えると私は今日からこの学校に転入した……えっと、転入したー……」
 ……この女は何か俺の周りに集まる女とは違う。直感的にそう思った。しかし、なんで『転入した……』で言い惑っているんだ?
 疑問に思っていると携帯の着信音が廊下に鳴り響く。女のものだ。女はソレをみて感心の様子を見せ、余裕を持ったように見えた。
「おい、転入した……なんだよ?」
 俺はなんでこんなに構っているんだ……?いや、不安になっているのか?とにかく今は女の答えを聞く必要がある。
「ごめんっ!ちょっと考え事してて……えっと、それで、私は転入した天野姫香。今から理事長室行かなきゃだからいつ会うかも分からないけど、さよなら!」
「おもしれぇ……」
 俺は思わず呟いていた。あんな女初めてだ。外見からしていじめられそうな感じなのに、中身はあっさりしていて他の女と違う……気になるな……後でアイツに調べさせよう。
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