レヴィオルストーリー
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「…ん…?」


その夜。

布団に入って寝ていたレイは不意に目を覚ました。



「…寒い…?」


夜だから、仕方ないかしら。



…と思うところだが、異常に寒い。



「アレン…」

隣の布団で寝ているアレンに目を移した。

が。



「…アレン?」



いない。


布団はもぬけの殻だ。


「え…、嘘。やだ…怖い…」


真っ暗な上に寒いし、この宿は怖いし。

嫌な感じがした。



「あ、アレン…どこ?」


返事はない。

とりあえずオレンジのパジャマの上からいつものグレーのコートを羽織った。



窓を開けてみる。



「…あら?」


何かの音がする。



ブンッ…ブンッ…


何かを振りかざすような音。



レイは音のする方向に視線を向けた。



真っ暗な中、月明かりに照らされるそれは…。




「…アレン」




アレンだった。

剣を振っている。

その足元には切られた木片が。



レイは宿を出てアレンの後ろの木陰に行った。


しばらくアレンを見ていようと思ったのだ。



修行らしきことをしているアレンの目は、戦いのときに見せる鋭く光るもの。



(…かっこいい)



レイが見とれながら思っていると、急にアレンが動きを止めた。


(あら?)



「……どうしたんだ、レイ」


後ろの木陰を横目で見ながらアレンが言う。


「えっ!」



気付かれていた。


(…やっぱり、凄いわ)



「あの…目が覚めて。窓から外見たらアレンがいたから何してるのかしらって思って…」


レイは正直に言った。


隠れていた理由にはならないのだが、


「そっか」


アレンは汗を服で拭きながらそう言うと、剣を鞘に納めた。



「もう終わり?」


「ん」


「もしかして、毎日してたの?」


「うん」





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