レヴィオルストーリー
22.涙
不意に視界が歪む。
「…あり?」
目をぱちくりさせるギルク。
灯台は真っ白に戻り、岩も割れてなかった。
さっきまでそこにいた女性と子供の二人はいない。
幻影がなくなったのだ。
外は晴れていた。
ギルクが振り返るとレイとイルが立ち尽くしている。
二人とも涙目だ。
次に正面を見ると、敵の赤い目の二人がいた。
その目はさっき幻影で見た男を思い出させる。
「…とまぁこれがこの建物の記憶かな」
ビーンがそう隣の少年に言う。
「建物の記憶であり、アレン=ブロドニスの記憶でもあるわけだね」
クロムは柔らかく微笑んで正面の二人の内の、灰色か黒色かわからない曖昧な色の髪をした少年に言った。
アレンは黙ったままだ。
身動き一つしない。
「…絶望を与えてから殺すってのはこういうことだったんだな」
返事をしない少年を無視して、クロムはビーンに言った。
「…まだよぉ♪」
ビーンは妖しく微笑んでそう言うと、一気に駆け出した。