レヴィオルストーリー
「アレンて最近表情豊かになってきたわね~」
悪い意味でも、とイルは付け足す。
「そうか?」
アレンは剣を戻しながら、首を傾げた。
後の付け足しは聞こえなかったことにしたらしい。
「レイもそう思うでしょ?」
「そうね。」
ん~、と考えながら空を見上げる。
途端にあの時のアレンの優しい微笑みを思いだし、真っ赤になる。
「…レイ、茹でタコみたい」
?マークを頭に浮かべたアレンをほっといてイルがおもしろそうに言う。
「もぉっ、いいの!」
さらに真っ赤になったレイはまたそっぽを向いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「…あと少しで『名も無い村』だ」
しばらくしてアレンが言った。
『名も無い村』。
今アレン達が目指しているその目的地は、モスフィックタウンの北に位置する、小さな小さな本当に名も無い村。
そこの住民は11年前まで最北の街ノスラムシティに住んでいたが、魔王に追い出されて行き場を失った。
そこで山を越えた南のプラリエ平野に、すぐに帰れるように新しい村をつくったのだ。
「そんな村に宿なんかあるの~?」
イルが嫌そうに言う。
「…行ったことないとこに行きたいっつったのはお前だろ」
無表情にアレンが言う。
「でもぉ~なかったらやだぁ」
「じゃあ帰れ」
「あ~ん、アレンったら冷たい~」
そう言ったイルはギルクに飛び付く。
「結局甘えたいだけなのね」
レイが呆れた様子でそれを眺めた。