レヴィオルストーリー
38.魔王
空間の歪みに一瞬だけ吸い込まれる。
そして、アレンはすぐに外へ出た。
真っ黒な床にトン、と軽く足をつける。
顔をあげると、不気味に光る赤い瞳と目が合った。
〈…ようこそ、予言の剣士アレン=ブロドニス〉
低い声が部屋いっぱいに響く。
アレンは無言でそれを睨んだ。
黒いマント、黒いフード。
床までつきそうな黒い髪。
唯一赤い、血のような瞳。
間違いなく、8年前に見た人物。
「…魔王、久しぶりだな」
〈やはりお前だったか。ナティアと42代目の子供…〉
ジロジロとアレンを眺める魔王は、座った黒い王座から立ち上がらない。
「そのまま戦うつもりか?」
〈これで十分だ〉
その言葉にアレンはまた無表情に魔王を睨んだ。
(何だこの余裕…。俺がそんなに弱いとでも思ってんのか)
胸がムカムカする。
憎しみがどんどん沸き上がる。
───それを止めたのは、脳裏に浮かんだあの三人。
(…わかってるよ)
憎しみなんて感情を持って、闇の塊の魔王に勝てるわけがない。
アレンの碧の瞳が、鋭くキラリと輝いた。
〈ほほぅ。もう前みたいな暴走は望めないようだな〉
魔王のその言葉と共に、空までもが暗い窓の外を青白い稲妻が走った。
それと同時にアレンは地面を蹴る。