天界の花嫁さま。
はじまりは突然…。
シトシトと降る雨なら、こんな事にはならなかったと思うの。
あの日は突然、豪雨になり…
傘を差してもびしょ濡れになるくらいなら、せめてあの子に…
うちの家じゃ飼えないからごめんね、って、傘をあげただけなの。
ーーピカッ
それは閃光のように、眩い光を放ち。
「君に決めたよ…」
一言、微かに、低い男の声が聞こえた…。
「…痛っ…!?」
一瞬、髪が引きつる感覚を覚えて後ろを振り返る。
そこには雨に打たれてしなる木々。
人の姿などいるはずもなかった。
「…?気のせい…かな?」
『…クゥン…』
小さな鳴き声をあげる子犬に、後ろ髪を引かれながらも、これ以上雨が酷くならない事を祈り、傘だけそっと置いて、私は大股走りで家へ帰った。