たゆたえども沈まず
高級マンションと言われているその前には、何個かベンチがある。そこに久喜がいた。
「本当に来ちゃったね」
ベンチの上に足を乗せていた久喜は、私を見上げて肩を竦める。
「のんちゃん、俺が弱ってる時にいつも連絡してくるんだもんな」
はは、と乾いた笑い声。
「違うよ、私。久喜が誕生日だって思って、コンビニで肉まん買って来たんだよ。あと、これ……」
ピアスを出す。久喜が目を丸くする。
「なんで泣いてんの、温」
ボロボロと涙を零しているのは自覚していた。何度瞬きをしても止まることがない。