たゆたえども沈まず

なんてタイミングだ。

「た、ただいま」

「おかえり……後ろは久喜くん?」

背中でぐいぐいと久喜を押した。帰った方が良い、と視線を送ると、久喜が頷いた。

そして、

「温さんにお世話になってます。艶野久喜です」

ちがーう!

「友達って、貴方のところだったの」

「はい。誕生日を祝いに来てくれて」

目の前で行われている会話に、私は軽く目眩がした。それに久喜の口調、初めて聞いた。

後ろへ向いていた視線が、私の方へ向く。

「送ってくれたなら、お茶でも飲んで行ってもらいなさいよ」

……は、い。



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