たゆたえども沈まず



久喜が家のソファーに座っている。

不思議な光景だ。

「やっぱり一軒家でかいな」

呑気にそんなことを言っている。二階でお母さんが洗濯物を干していた。

「……うち、母子家庭だから。二人だけじゃ広いんだけど」

「へー、俺も同じこと思ったことあるよ」

言われて、驚く。
久喜もそんなことを思うんだって、それは偏見か。

ううん、久喜はずっと寂しがり屋だった。

紅茶の入ったマグカップを置いて、久喜が膝を抱き始めた。

「ここ安心するから、眠くなる……」

投げ出された右手に、恐る恐る左手を重ねてみる。


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