たゆたえども沈まず
放送を終えて、非常階段の手すりに寄りかかっていた。
「でも良かった、仲直りできたみたいで」
「それは……そうですね」
「クキ、そのまま住み着くんじゃないの?」
「なんですかね」
「のんちゃん、嬉しそうだね」
その言葉に白目をむきそうになった。まさか、嬉しいだなんて、そんな。
確かにお母さんと久喜が普通に話しているのを見ると嬉しいけれど。
このままで良いなんて少しも思ってはいない。
「先輩、久喜が金曜の夜に一緒に遊んでた女って誰か知りませんよね」
「流石に」
腕の上に顎を乗せる。プリンス先輩が知らないとすればここで糸は切れてしまう。