たゆたえども沈まず
私は久喜と話す仲なだけであって、久喜の友達の名前は少しも知らない。
久喜が学校で喧嘩した相手の名前もよく知らないし、その取り合った女の先輩も知らない。
「久喜が食堂で喧嘩した人の彼女って誰か知ってます?」
「松潟って女子じゃないかな。隣のクラス」
「え、三年なんですか?」
馬鹿な質問をした。隣のクラスだと言っているのに、三年じゃないはずがない。
「知らなかった……」
「あのとき、久喜が辞めたことが大きかったからな。久喜が辞めて、先輩が卒業してみんなけろっとした顔してたし」