たゆたえども沈まず
図書館の脇の紫陽花は紅くなる。土に含まれているアルカリが強いのか、毎年咲く花は紅い。
中学の時、この道を通るのが唯一の楽しみだった。
まだ咲かない紫陽花を見ながら、そこを通り過ぎようとすると、
「よ」
まるで、昨日も会ったよねというように首を傾げている久喜。
神出鬼没クッキーというのは中学でのあだな。
でもここは繁華街にも近いから、遊んで帰る途中だったのかもしれない。久喜はかなり気紛れ。
この前まで金髪だった髪が茶色に戻っている。長かった襟足も短くなっていて、前に見たときに比べたら好青年。
「帰り途中?」
「いや、温待ってた。ここに居たら会える気がしたから」