たゆたえども沈まず
体育祭では腕相撲がある。クラスで一人代表者が出て、トーナメント方式で戦う。
江戸先輩は入学して以来、屈強な柔道部の男子にも負けたことのない最強の女子らしい。
「あの江戸先輩……」
「返信きた。松潟実優? クラスメートだって。うわ、いい加減覚えろって。面倒だからパス」
ぽい、と携帯がこちらに放られた。きちんとキャッチして画面を見ると、通話になっている。相手は勿論江戸りりす先輩。
部長はこちらを見てはおらず、生物の教科書に向き直っていた。
『もしもし、瀧本?』
江戸先輩の声が聞こえている。