たゆたえども沈まず
部長に掴みかかろうとした江戸先輩を止めて言った。
こちらを見た江戸先輩は「あ、そうなの?」と言いながらその手を引っ込めた。
「松潟になんかされたの?」
「いえ、そういうのではなく……うちの学年に艶野久喜っていう生徒がいたんですけど」
「知ってる。あーあのことか! 食堂で喧嘩したやつ」
「はい、その喧嘩した先輩の方の彼女が、松潟さんだって聞きまして」
頷きながら、江戸先輩は部長の近くにある椅子に座った。体育祭で腕相撲をしている姿しか見たことがなかったので、有名人に会ってしまった気分。