たゆたえども沈まず
江戸先輩の手が止まる。
「んー、会ってるどうかは分かんないけど。松潟は結構夜遊びしてるらしいよ」
「そうですか……ありがとうございます」
「大丈夫だよ、瀧本をよろしく」
「あたしがよろしくしたんでしょうよ」
そうだっけー、と江戸先輩がケラケラ笑う。先輩は呆れた顔をしながらも嫌そうではない。
本当に良かった。
帰り道に久喜が現れた。
手にはバイト募集誌を持っている。それに目をとられていると、さっと鞄を取られた。
「おかえり」
「あ、ただいま」
まだ家ではないけれど、久喜はそれを言いたがる。