たゆたえども沈まず

あの時も、私は思っていた。ここを通るなら多分繁華街で遊んできた帰りなのだろう、と。

「温ママが許してくれなさそう」

「そうかもしれないけど、お母さんにそんなこと言われる筋合いがないでしょう」

「いや、俺のママでもあるし」

「どうしてよ? 教育ママは苦手でしょう」

軽く聞いた。冗談のような答えが返ってくると思っていた。

「温と結婚したら俺のママでもあるし」

は、と笑いかけた。今なんて。いや、冗談でしょう。だって、久喜はふざけるときいつも、のんちゃんって。

言ってない?


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