たゆたえども沈まず
美形でしかも口説くのが上手かったら、それはクラブの女も放っておかないだろうな。これが喧嘩のときには豹変することなんて知らずにいたら。
私は笑うと、久喜はスクールバッグに手を伸ばしてきた。
「持つよ」
「いいよ。そんな重くないし」
「俺居る意味なくなんじゃん。今金持ちだから財布取って逃げたりもしない」
「そんな心配してないから」
ジェントルマンはこれだから困る。
女の荷物だったら持ってあげるから、鼻高々な女が増える。
それが自分ひとりに向けられてるって勘違いしているから。
勘違いに気付いた女は他の勘違いしている女を見て笑う。「あの子、馬鹿じゃない」って。
私はそんな女と並ぶ気は毛頭無い。