たゆたえども沈まず

「い、痛い……」

「何?」

「かもです……」

こちらを見た久喜の顔が珍しく怖かったので、小さく付け加える。

「そうやって八つ当たりしない」

「何すか、説教すか」

「大事にしたいと思うなら素直になれよ、ガキ」

プリンス先輩からそんな言葉が出ることに驚く。きっと学校の人間が聞いたら違うファンがつきそう。

こんなトゲトゲした久喜を見るのも久しぶりだけど。

「間違えた、クキくん」

「心に留めておきます、佐山先輩」

あ、先輩の名前久しぶりに聞いた。

「じゃあ、のんちゃん」

「あ、はい。お疲れ様です」

小さく頭を下げる。



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